設立趣旨書
現代社会は都市を中心として展開し、そこには豊かな暮らしへの期待を抱いて多くの人々が集まるだけでなく、価値観の相違から対立が起き、さまざまな社会的な格差も生まれています。 こうした都市特有の課題は現代に限らず、人類史において古くから在ったことが近年の研究により指摘されています。 その歴史の流れのひとつをさかのぼると、メソポタミアにたどり着きます。
メソポタミアは、世界最古の都市文明が生まれた地であり、現代都市文明の礎となる多様な発明や革新をもたらしました。 メソポタミアの核となる都市では、多くの人々が互いの価値観の対立を回避する工夫をして共存しながら、なおさまざまな格差も同居していました。 メソポタミアの都市の探究は、人類史における都市や文明の起源の解明だけでなく、都市を中心にした現代社会の多様な問題の解決に貢献し、現代社会の未来への提言にもつながると期待されます。
メソポタミア都市文明を探究するためには、長期的な展望をもって現地の遺跡を考古学的に調査する必要があります。 現地のイラク共和国は、最近まで行きにくい国としてとらえられてきました。 しかし、ここ数年、南イラクの治安が急速に回復し、諸外国隊が調査を再開している様子が明らかになってきました。 現地からの要請に応える形で教育・研究支援を進めるとともに、邦人によりメソポタミア都市文明を解明するという国際的な貢献の好機が到来しています。
一方、多くの日本人の意識のなかで、現代イラクと文明発祥地のメソポタミアが地理的、歴史的に結びついていません。 メソポタミアの関心度は高いものの、戦乱の続くイラクは単に危険な国としてまるで別の世界であるかのように見られがちです。 この意識のずれは、古代と現代をつなぐ効果的な歴史教育の欠如に起因しています。 その解決のためには、メソポタミア文明と現代イラクの地理的、歴史的なつながりを教育の場で広く認知させる普及活動が求められています。
四半世紀以上、本法人の設立代表者の主宰する任意団体「西アジア考古学勉強会」は、メソポタミア周辺の考古学に関する議論の場を継続してきました。 本法人は、その功績を踏まえ、当勉強会と協力しつつ、日本の若い世代への歴史教育のあり方を探求し、その成果の普及に努めます。 また、イラクとは、「草の根」的な文化交流を促進し、考古学研究も協同します。 こうして現代社会の問題解決に寄与していく所存です。
以上の理念を実行すべく、分野や立場を越えた理解や支援、国内外の諸機関との連携を得て、収益を目的としない独自の市民参加型組織を目指すことにしました。 よって、ここにメソポタミア周辺の考古学および関連分野の研究成果の普及、次世代への教育、日本とイラクの学術・文化交流の促進を目的とした特定非営利活動法人を設立します。
2018年 7月21日
法人の名称 特定非営利活動法人 メソポタミア考古学教育研究所
設立代表者 小泉 龍人
以下全文・・・
役員・事務局・顧問
小泉 龍人 | (早稲田大学・講師) |
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榊原 智之 | |
増渕 麻里耶 | (京都芸術大学・教授) |
船引 孝悦 |
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小泉 龍人 | (兼任) |
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榊原 智之 | (兼任) |
山口 孝弘 | (Web担当) |
Mahmoud Al-Qaysi | |
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(Baghdad University, Professor) | |
Imad Dawood | |
(Thi-Qar University, Professor) | |
Laith Hussein | |
(The Iraqi State Board of Antiquities and Heritage, Director General) |
沿革
1991年4月、メソポタミア考古学教育研究所の前身となる西アジア考古学勉強会(旧早稲田大学西アジア考古学勉強会)が設立された。 同会は、おもに西アジアやエジプトなどにおける考古学に取り組む有志の集まりとして、これまで早稲田大学を拠点として活動してきた。 同会では、年齢、所属等を超えた率直な意見交換が行われ、自由な雰囲気のもとで活動が持続している。 今節、現地治安の回復、諸外国隊による調査再開などの時局に鑑みて、メソポタミアの都市文明を邦人の手により解明するという国際的な貢献の機会が到来している。 これはまさに、四半世紀を越える西アジア考古学勉強会の活動実績と有志のつながりを支えとして、活動をさらに飛躍させる好機といえる。 そこで、メソポタミアにおける考古学的な調査の実現に向けた一歩を踏み出すために、西アジア考古学勉強会の活動を下支えとしながら、メソポタミア考古学教育研究所を立ち上げるに至った。
規則
主な活動内容
1. | メソポタミアとその周辺に関する考古学的な学術研究事業 |
・ | 講演会の企画と実行を行う。 |
・ | シュメール考古学プロジェクトAPSU (Archaeological Project for Sumerian Urbanization) 南メソポタミアのシュメール地方(イラク南部)にて考古学調査を実施し、同プロジェクト名称はAPSU(アプスー)とする。 |
2. | 若手研究者の育成および学術情報を共有する事業 |
・ | 勉強会等を通して、若手研究者の能力向上および一般参加者への教育普及を図る。 |
3. | 研究成果を子どもに教育および普及する事業 |
・ | 子どものための考古学公開講座および体験講座を企画し実行する。 |
4. | 日本とイラクの国際学術交流を図る事業 |
・ | イラクの学生を対象に、考古学の集中講義用教材を作り公開教育する。 |
・ | イラクの学生で日本へ留学希望者の、日本留学を支援する。 |
・ | イラクから考古学教育関係の専門家を招聘し、日本とイラクの関係を密接にするとともに、考古学関係の連携強化を図る。 |
5. | その他、目的を達成するために必要な事業 |
・ | ホームページを通じて、積極的に情報を発信する。 |
・ | 博物館見学ツアーを実行する。 |
・ | ニューズレターにて、JIAEMの活動状況を伝達する。 |
関連団体
■西アジア考古学勉強会 SWAA (Seminar of West Asian Archaeology)
年齢、所属、立場を超えた有志が、おもに西アジア、エジプト、インダス、中央アジアなどにおける考古学と関連分野についての発表と精力的な意見交換を行う場となる勉強会を開催する。 発表内容は自由なものとする。また、卒業論文、修士論文、博士論文の構想発表や学会の予備発表も可能とし、学生に研究向上の機会を提供する。 さらに、上記の成果を広く公開し、共有する機会として、シンポジウムを開催する。
■中東懇話会 MEFT (Middle Eastern Forum of Tokyo)
アラビア語を基本ツールとして、アラブ世界に住む人々の暮らしの中からの情報発信をすべく、翻訳活動に力を注いでいる。 会員の大半は、アラブ世界に関心のある一般の社会人。日常的な活動としては、月例の勉強会が中心。 そこで取り上げられるテーマも、ニュースにはならないようなアラブの市井の人々の普段の暮らしにフォーカスすることを心がけている。
ロゴマーク解説
メソポタミアと考古学を表現
丸い形:円筒印章
背景:水色 アプスー(メソポタミア神話の原初の淡水)をイメージ 枡目:発掘現場のトレンチ(試掘溝) |
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2本の波:濃い青色
ユーフラテス川とチグリス川 | |
JIAEMの I:ヤシの木で置き換え
ナツメヤシはイラク共和国の国樹 草色は日本を意味し、両国の更なる文化交流を願う形と配色 他の文字:茶色 遺跡の日干しレンガをイメージ |